うる星やつら
『うる星やつら』(うるせいやつら)は、高橋留美子による日本の漫画作品。第26回(1980年度)小学館漫画賞少年少女部門受賞作。「うる星」とも。
2019年4月時点で累計発行部数は3000万部を記録している。
浮気者の高校生・諸星あたると、彼を愛する一途な宇宙人美少女・ラムを中心に架空の町、友引町や宇宙や異次元などを舞台にしたドタバタラブコメディ。
その内容の斬新さと魅力的なキャラクターは1980年代のみならず以降の漫画界とアニメ界に衝撃を与え、当時の若者たちの圧倒的支持を受けて一大ブームを引き起こし、若者文化にも影響を与えた。
あらすじ[編集]
宇宙人である鬼族が、地球侵略を仕掛ける。鬼族は圧倒的な技術力と軍事力を保有しており、武力で容易に地球を手に入れるのでは簡単過ぎて面白くない。
そこで、鬼族代表と地球代表とが一騎討ちで戦い、地球代表が勝った場合はおとなしく帰り、地球代表が敗れた場合は地球を占領すると宣言した。
その一騎討ちは、鬼族の伝統に従い『鬼ごっこ』で行われ、期限内に地球代表が鬼族代表の角を掴むと地球の勝ち、鬼族代表が逃げ切ると鬼族の勝ちというものである。
地球の命運を賭けた鬼ごっこの地球代表に選ばれてしまった高校生の諸星あたるは、当初やる気がなかったものの、恋人で幼なじみである三宅しのぶの「勝ったら、結婚してあげる」 という発言に
より、彼女と結ばれたいがために鬼族代表のラムを追いかけ始める。あたるがラムを追いかけつつ発した「勝って結婚じゃぁ〜」の一言は、あたるが恋人で幼なじみのしのぶを想っての発言であったが、
ラムは自分に求婚しているのだと勘違いし、それを受け入れてしまう。そのため、鬼ごっこには勝利、地球は侵略を免れるが、ラムは諸星家に住み着いてしまう。
かくして、あたると宇宙から来た押しかけ女房・ラムの果てしなき鬼ごっこが始まる。そして、友引町はさまざまな災いや奇妙な出来事に巻き込まれていく。
登場人物[編集]
諸星あたる[編集]
本作の主人公。「あたるとラムのどちらが主人公なのか?」という質問に対し、高橋は「少年サンデーグラフィック」にて「わたしは諸星あたるが主役だと思っていますがね」と回答し、
原作でもあたるが「おれが主役だ」と発言する場面がある。
友引高校に通う高校生で、当初は1年4組、後に進級して2年4組になる。ラムは妻を自称するが、入籍していない。基本的には楽観的かつアホなことばかりする性格であり、クラス内では
「並みのアホではない」として公認されている。また無類の女好きで、よくガールハントをしに町に出かけ、美人をみるや声をかけてナンパしている。
連載中期頃より住所と電話番号を聞き出そうとするようになる。生まれは4月13日の金曜日、仏滅で大地震の起きた日であり、錯乱坊(チェリー)曰く「世にも稀な凶運の相の持ち主」であるという。
キャラクター設計の観点からみると、初期は災いを自身に呼び寄せる「凶運」が前面に出た受け身の女難キャラクターだったが、これでは話が続かないと原作者の高橋自身が判断し、
徐々に女好きの面が強調され、基本的には楽観的で浮気性で世渡り上手なキャラクターに変化していった。しかも自身の不幸を積極的にばら撒いたり、悪用したりして事態を悪化させることも増える。
面堂とは、初対面時から犬猿の仲であるが本質は同じである。しかし本能に素直なために高校の女子生徒たちからは理性があり、才色兼備な面堂のほうが好かれている。
ラム[編集]
本作のヒロイン。当初は第一話に登場したゲストのはずだったが、その後はヒロインとしての地位を固め、主役級として描かれるようになる。
「うる星」から地球侵略のためにやってきた鬼型宇宙人の娘。語尾に「だっちゃ」、「〜のけ?」とつけて話す。一人称はうち。
地球を賭けた鬼ごっこの相手としてコンピューターでランダムに選ばれた諸星あたるとの鬼ごっこに負け、本人の勘違いからあたるの婚約相手となったことで諸星家に住み着く。
以後はあたるのことを「ダーリン」と呼び、心底惚れ込んでいる。基本的に容姿は地球人と酷似しているが、耳が少し尖っていて、頭に小指ほどの小さい二つのツノを持つ。
このツノは鬼族の特性として成長に伴って生え替わる。髪の色は、原作では虹色(構造色)で、見る角度によって様々に変色する。アニメでは常に緑色。
普段は、日本古来の鬼のイメージとして形称化されることがある「虎縞模様」のビキニとロングブーツを着用しており、露出度が非常に高い。
テン[編集]
ラムの従弟で、頭部のつむじのあたりに角を一本生やしている鬼族の幼児。原作では第7巻から登場したが、アニメでは序盤の第3話から登場。
ラムが諸星家に同居してからすぐ後を追うような形で登場している。
ラムの婚約者となったあたるを視察しに地球へとやってきたが、登場初期はあたるをラムの相手としてふさわしくないと思っており、たびたびラムのあたるへの印象を悪くさせようとしていたが、
次第にそのような行動は少なくなっていきそのまま諸星家へ住み着いてしまった。あたるが精神的に同レベルの子供なのでいつもケンカが絶えないが、本心から憎みあっているわけではなく、
「一回泣かしたらな気が済まん」程度のいわゆるケンカ友達といった関係。物語終盤ではあたるとの別れの危機に涙を流していた。
女性には自分が子供であることを最大限に利用して愛らしく甘え、男性に対しては悪態をついたりいたずらをしたりと態度が悪いので、あたるを筆頭に男子生徒からは可愛げのないガキとしてジャリテン
のあだ名で呼ばれている。また、面堂やあたるをアホ呼ばわりしている。
面堂終太郎[編集]
友引高校へ転入してきたあたるのライバル。強大な財力と軍事力を持つ面堂財閥の跡取り息子。
容姿端麗かつ秀才で運動神経も良く、女性には優しくモテるが、男に対しては非常に冷たい性格であり、特にあたるとは犬猿の仲で事ある毎に衝突する。
日本刀(アニメ版では「村雨」という銘)を常に携帯し、喧嘩の度にあたるを斬ろうとするがいつも白刃取りで受け止められる。
ちなみこの日本刀はチェーンソーと戦って折れるくらいに脆い代物であることが発覚している。
あたる曰く「プライドの化けもん」と言われる程自尊心が高く、また非常に女好きであり、初期はラムに熱心にアタックしていた。
ラムの相性占いによって本質的にはあたるとは同レベルのアホ(と言うよりは諸悪の根源)である事が判明している。
その時、クラスメイトからは『面堂から金と権力を取るとあたるになるのか』と不名誉な評価をされている。
三宅しのぶ[編集]
友引高校に通う女子生徒。初登場時は1年4組、後に進級して2年4組に在籍。2年生の時はクラスの書記を務める。高校1、2年ともに諸星あたるの同級生で、幼馴染。
登場当初はあたるの恋人であった。しかし、あたるとラムの関係を目の当たりにしているうちに、次第にあたるを奪い返そうという気持ちは薄れ、恋愛感情は立ち消えた。
面堂終太郎登場以降は、面堂に執心している。
第4話「あなたにあげる」において、自分の目の前でラムがあたるに接吻したのに激怒してあたるに机を大量に投げつけて以降、次第に投げるものが教卓やテーブル、ボートなどとエスカレートした結果、
重いものを平気で投げたり持ち上げたりする怪力の持ち主になった。
藤波竜之介[編集]
友引高校2年4組への転入生。一人称は「おれ」。女性ではあるが、竜之介の父は、浜茶屋の跡取りが男でなければならないと決め付けているため、一人っ子の竜之介を「一人息子」だと断固主張する。
浜茶屋を経営する変わり者の父に男として育てられた為、行動が男っぽく荒々しい。一方で女としての自覚はあるので、男扱いされるのを嫌う。
男と間違われたり、父親にからかわれたりすると激高して「おれは女だ~!」と叫んで殴り飛ばすシーンが定番となっている。いつも男の格好をしているが、竜之介が女の格好をしようと画策しても、
必ず父に妨害され失敗に終わっている。面堂終太郎と同等、またはそれ以上に女子生徒にモテるのが悩みの種。バレンタインデー、ラブレターなど面堂の3倍は貰っている。
テレビアニメ[編集]
本作はアニメ化されたことにより、4年半に渡るTVシリーズ、6作の劇場版、12作のOVAが製作され、商品化においても100億円以上売り上げる大きな成功を収めた。
アニメ版ではチーフディレクターの押井守が1984年3月放映分(第106回)をもってチーフディレクターを降板したため前半と後半で作風が大きく異なる。
押井守による劇場映画第2作『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』は押井作品の原点であり出世作でもある。
本作は原作の「いつまでも続く日常」のアンチテーゼともとれる内容となっており、原作者である高橋留美子は「『ビューティフル・ドリーマー』は押井さんの『うる星やつら』です。」
と語っている。押井は本作完成後『うる星やつら』から降板し同時にスタジオぴえろを退社。その後、2度と高橋留美子作品を担当することはなかった。
アニメ作品は原作の人気に加えて、スタッフの暴走と揶揄される押井守や伊藤和典の先鋭的な演出や、当時若手の実力派アニメーターによる作画からアニメファンからも注目されるようになった。
本作はアニメ界の異才をあまた輩出した伝説的な存在となっている。
また、1980年代の国産アニメで盛んに行われていたアニメーターの「お遊び」的な作画により、騒動や人ごみ(モブシーン)の中に『めぞん一刻』を始めとするさまざまな高橋キャラがしばしば
「隠れキャラクター」的に登場しているほか、本作と全く関係のない他の漫画・映画・アニメのキャラクターもしばしば登場している。