インフルエンザ

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インフルエンザ[編集]

インフルエンザ(イタリア語: influenza、ラテン語: influentia)とは、インフルエンザウイルス急性感染症。上気道炎症状・気道感染症状、呼吸器疾患などを呈する。流行性感冒(りゅうこうせいかんぼう)、略して流感(りゅうかん)とも呼ばれる。日本語ではインフル、英語ではfluと略されることも多い。

病原となるインフルエンザウイルスにはA型・B型・C型・D型の4種類があり、そのうちA型・B型は季節性インフルエンザの病原ウイルスである。季節性インフルエンザは全ての年齢層に対して感染し、世界中で繰り返し流行している[2]。日本などの温帯では、冬季に毎年のように流行する。通常、11月下旬から12月上旬頃に最初の発生、12月下旬に小ピークを迎える。学校が冬休みの間は小康状態で、翌年の1-3月頃にその数が増加しピークを迎えて4-5月には流行は収まるパターンであるが、冬季だけに流行する感染症では無く夏期にも流行することがある。A型は平均相対湿度50%以下になると流行しやすくなると報告されている。

全世界では毎年300万人から500万人が重症化し、呼吸器症状により29万人から65万人の死者を出している。先進国における死者は65歳以上の年齢層が最も多い。2009年に豚由来インフルエンザであるインフルエンザウイルスA(H1N1)pdm09が世界的に流行した当初は、世界平均で1957年のアジアかぜ(0.5%)と類似する死亡率であり、WHOが発表した2009年7月6日時点での推定死亡率は0.45%で、通常の季節性インフルエンザの0.1%よりも高い死亡率とされていたが、実際にはその推定値の10分の1以下であった。

感染経路は咳やくしゃみなどによる飛沫感染が主といわれている。抗インフルエンザウイルス薬として既存のウイルス向けにタミフル、リレンザ、イナビル、ゾフルーザが、既存薬では効果の無い新興・再興ウイルス向けにアビガンなどが存在するものの、ウイルスはすぐに耐性を獲得し、効果も限定的であることから、その効果も備蓄するに値するかが議論されているかもしれない。

臨床像[編集]

風邪(普通感冒)とは異なり、比較的急速に出現する悪寒、高熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛を特徴とし、咽頭痛、鼻汁、鼻閉、咳、痰などの気道炎症状を伴う。腹痛、嘔吐、下痢といった胃腸症状を伴う場合もある。 主要な合併症として肺炎とインフルエンザ脳症がある。 潜伏期間は1–2日が通常であるが、最大7日までである。 A型インフルエンザはとりわけ感染力が強く、症状も重篤になる傾向がある。 まれにA型、B型の両方を併発する場合もある。 肺炎や上気道の細菌感染症を続発し死亡することがある。 このように、多くの場合に普通感冒と比べてインフルエンザの症状は重いが、しかしながら、インフルエンザウイルス以外の病原体によりインフルエンザ同様の症状・経過となる場合もあれば、インフルエンザウイルスが感染しても不顕性感染であったり鼻炎症状のみの場合もあり、インフルエンザウイルス感染のみを特別視するのは適切な対処に繋がらない場合がある。

合併症がハイリスクとなる人とは、

65歳以上の年齢 慢性呼吸器疾患(喘息やCOPD) 心血管疾患(高血圧単独を除く) 慢性腎、肝、血液、代謝(糖尿病など)疾患 神経筋疾患(運動麻痺、痙攣、嚥下障害) 免疫抑制状態(HIV感染や、薬物によるものを含む) 妊婦 長期療養施設の入所者 著しい肥満 アスピリンの長期投与を受けている者 担癌患者 高齢者では上気道の症状は若年層よりも低頻度となり、下気道の病変の率は高く、つまり肺炎のリスクが高くなっている。

ウイルス学[編集]

「インフルエンザ」の病原体はRNAウイルスのインフルエンザウイルスである。以下の4種類が存在する。

A型インフルエンザウイルス - 季節性インフルエンザ、鳥インフルエンザなど B型インフルエンザウイルス - 季節性インフルエンザ C型インフルエンザウイルス - 主に小児に感染する D型インフルエンザウイルス - ウシやブタなどの家畜に感染する 感染してウイルスが体内に入ってから、2日 - 3日後に発症することが多いが、潜伏期は10日間に及ぶことがある。子供は大人よりずっと感染を起こしやすい。ウイルスを排出するのは、症状が出る少し前から、感染後2週間後までの期間である。インフルエンザの伝播は、数学的なモデルを用いて近似することが可能で、ウイルスが人口集団の中に広がる様子を予測する上で役に立つ。

インフルエンザは、主に次の3つのルートで伝播する。患者の粘液が、他人の目や鼻や口から直接に入る経路、患者の咳、くしゃみ、つば吐き出しなどにより発生した飛沫を吸い込む経路、ウイルスが付着した物や、握手のような直接的な接触により、手を通じ口からウイルスが侵入する経路である。この3つのルートのうち、どれが主要であるかについては明らかではないが、いずれのルートもウイルスの拡散を引き起こすと考えられる。空気感染において、人が吸い込む飛沫の直径は0.5から5マイクロメートルであるが、たった1個の飛沫でも感染を引き起こし得る。1回のくしゃみにより40000個の飛沫が発生するが、多くの飛沫は大きいので、空気中から速やかに取り除かれる。飛沫中のウイルスが感染力を保つ期間は、湿度と紫外線強度により変化する(紫外線で殺菌される)。冬では、湿度が低く日光が弱いので、この期間は長くなる。

インフルエンザウイルスは、いわゆる細胞内寄生体なので細胞外では短時間しか存在できない。紙幣[22]、ドアの取っ手、電灯のスイッチ、家庭のその他の物品上で短時間存在できる[23]。物の表面においてウイルスが生存可能な期間は、条件によってかなり異なる。プラスチックや金属のように、多孔質でない硬い物の表面でかつ、RNaseが完全に除去された環境つまり人が絶対に触らない無菌室内にある多孔質でない硬い物の表面では、実験的にはウイルスは1〜2日間生存させたのが最長記録である。RNaseが完全に除去された環境つまり人が絶対に触らない乾燥した紙では、約15分間生存する。

しかし、手などの皮膚の表面には多量のRNaseが存在するため、RNAウイルスは速やかに断片化されるため皮膚での生存時間は5分間未満である。この点は細菌やスピロヘータとしばしば混同されている[24]。

鳥インフルエンザのウイルスは、最適な細胞ごと凍結することにより、長く冷凍保存できるという論文もある[25]。インフルエンザウイルスは、RNaseがなくても56℃、60分以上の加熱により不活化する。RNaseの存在下では常温5分未満で断片化する。またpH2未満の酸によっても数分で不活化する[25]。