ダックスフント
ダックスフント(独:Dachshund)はドイツ原産の犬種。
ドイツ語でアナグマを表すダックス(Dachs)と犬を表すフント(Hund)を合わせた「アナグマ犬」を意味する。
英語読みでダックスフンドとも呼ぶ。
寿命は12歳から16歳前後。
ジャパンケネルクラブ登録頭数は、記録の残る1999年から2007年までは、1位、2008年以降は3位。
また、アメリカでも人気があり、アメリカンケネルクラブでの登録頭数は常に10位以内に入る。
容姿[編集]
胴長短足の体型が特徴的。口元はやや長め、耳は下に垂れ、筋肉がよく発達している。
マズルが長く鼻腔内の面積が広いため、嗅覚に優れている。鼻の色は基本的に黒だが、一部はレバー色、淡いピンク色もいる。
また、胸が十分に発達している。骨端が突き出ているので、前から見ると楕円形をしている。あばらはよく張って腹部につながっている。
性格[編集]
生まれつき友好的で落ち着きがあり、神経質であったり攻撃的であったりということはない。
情熱的で辛抱強い。ただ元々が猟犬であるがゆえに、時として攻撃的・負けず嫌い・頑固・活発・やんちゃ・遊び好きといった性格を見せる。
また、ダックスフントは毛質によって性格が異なるとされている。ロングコートはスパニエル系の血が混ざっており、スパニエルならではの温厚でおとなしい性格を受け継いでいる。
スムースコートは最も歴史が古く、ダックスフントらしい明るさがあるが、警戒心も強いため吠え癖がつきやすい傾向がある。
そのため、幼いうちから、吠えても反応せず無視するしつけで吠え癖をつけないようにする。
ワイヤーコートはテリア種の血が入っているため3タイプの中では最も活発で、頑固な面がある。
吠えたり、飛びついたり、噛み癖がつかないように幼犬のうちから根気強くしつけを行う。
サイズ[編集]
ダックスフントのサイズはスタンダード、ミニチュア、カニンヘンの3つのタイプに分類されている。
ジャパンケネルクラブでは、スタンダードは体重9~12㎏(胸囲35㎝以上)、ミニチュアは体重5㎏以下(胸囲30~35㎝)、カニンヘンは体重3~3.5㎏(胸囲30㎝以下)を理想としている。
なお、仔犬時の血統書において、ミニチュア・カニンヘンと明記されていても、成長するにつれて、各協会の規定とする体型と異なることはある。
毛質[編集]
毛質は大きく分けてスムースヘアード、ロングヘアード、ワイヤーヘアードの3種類がある。
スムースヘアード
毛質は堅く、短いのが特徴である。また、毛の流れは滑らかで光沢もあり、密生している。
ロングヘアード
毛質は柔らかく、光沢があって長い。
わずかにウェーブした毛は、あごの下部、同の下部に比べて、耳の先端、前肢のうしろ側が特に長く、尾のうら側が最も長い。
ワイヤーヘアード
被毛は顎と眉、耳を除いて、全体に密生した短い粗い剛毛が、下毛とともに全身を覆っている。
顎にはひげがなければならず、眉は毛深く、耳はスムースな短毛である。
毛色[編集]
ダックスフントは、多くの毛色があることで知られている。また毛質ごとに分類される。
スムースヘアードとロングヘアードについては2色と単色、その他のカラーに大きく分けられる。
2色は濃いブラウン(チョコレート)またはブラック。それぞれにタンまたはイエローの斑が、目の上、マズル及び下唇の側面、耳朶の縁の内側、前胸部、脚の内側及び後部、足の上、肛門の周り、
そこから尾の下側の3分の1又は半分に見られる。ブラック&タン、チョコレート&タン、ブラック&クリーム等と呼ぶことが多い。 また、単色(ソリッド)は、レッド、レディッシュ・イエロー、
イエロー(クリーム)、チョコレート。非常に散在した黒の毛(シェーデッド)がある犬でも単色として分類される。その他の色はダップル(斑)とブリンドル(濃い縞)等がある。
ワイヤーヘアードについては、上記以外にもワイルド・ボアー・カラー(野猪色)、デッド・リーフ(枯葉色)、ソルト・アンド・ペッパー(ごま塩色)などもある。
近年はパイボールド、ソリッド、ブルーなど新しく毛色が作出されている。これらは特殊色、レアカラーとも呼ばれる。異毛種間での交雑は認められておらず、本来は血統書は発行されない。
また、血統書以外にも後述の「乱繁殖」や「遺伝性疾患」と直結する問題とされることもある。
歴史[編集]
ダックスフントの起源は古く、最も古いものでは古代エジプトの壁画にダックスフントと酷似する犬種が刻まれている。
ダックスフントの祖先はスイス地方原産のジュラ・ハウンドや中型のピンシェルなどの獣猟犬だと考えられている。
これらの犬を交配させて12世紀頃にダックスフントの基礎となる犬が誕生した。
本来、ダックスフントは名前の表す通り、体重15キログラム程もあるアナグマを猟るため、また、負傷した獲物の捜索及び追跡のために農夫などによって改良された犬種で、
「Bracken(狩猟)」の時代から特に地下での狩猟に適するよう繁殖されてきた歴史がある。 当時、ダックスフントはドイツ国内においてはテッケルやテカル、ダッケルと呼んでいたと言われている。
19世紀頃、ミニチュアとカニンヘン(兎という意味)がスタンダードが入ることのできない小さな穴に入って、アナグマのみならず、ネズミやアナウサギ、テン類を猟るために改良されて誕生したようである。
また、この頃からアメリカや他の国へも少しずつ輸出されるようになったらしく、そのダックスフントの繁殖に尽力していたと言われる最古のクラブは、1888年に創立されたドイツテッケルクラブ
(Deutscher Teckelklub)である。
第一次世界大戦では、ドイツ語でも呼び方が嫌悪され、英語で「バジャードッグ」と呼ばれていた。
飼育上の注意[編集]
胴体が長く、腰や股関節などへの負担が大きいため、ヘルニアを代表とする関節疾患にかかりやすい。
ジャンプ、高所や階段の昇降、滑りやすい床や路面の走行、肥満、抱え方等には注意が必要である。
脚が短いことから、地面と腹部が近いため、腹部を傷つけてしまったり、地面が熱いときは熱中症になりやすい。垂れ耳であることから、蒸れやすく、ダニの寄生や細菌による外耳炎になりやすい。
肥満(ヘルニア)防止のダイエットや小型化を目的として、素人による餌の制限が安易に行われており、その個体に対する過度な分量の餌を与えられず、栄養失調から所疾患を引き起こすケースも存在する。