美女と野獣
美女と野獣[編集]
フランスの民話『美女と野獣』(J・L・ド・ボーモン夫人版)を元に1991年に制作されたディズニーの長編アニメーション映画作品である。日本での公開は1992年9月23日。また、2002年にはIMAXシアター向けに同作品を作り直して上映、2010年にはディズニーデジタル3-D版が上映された。
ストーリー[編集]
森の奥にある城に、若く美しいがとても我がままで傲慢な王子が住んでいた。ある夜、醜い老女が城を訪ね、一輪のバラを宿代代わりに差し出し城に一晩泊めてほしいと頼む。しかし王子は老女の醜さを理由にそれを断る。老女は「見かけで人を判断すると、心の奥底の真実が見えなくなってしまう」と忠告するが、王子は聞く耳を持たず再び追い返そうとした。するとその瞬間に老女は美しい魔女に変わり、優しい心を持たず人を外見で判断する王子と、王子をそのように育てた召し使いたち、さらにその城全体に魔法をかけ、王子を恐ろしい野獣の姿に、召し使いたちを家財道具の姿に変えてしまった。魔女はどんな物をも映し出す魔法の鏡と初めに見せた一輪のバラの花を置き消えていった。そのバラの花びらが全部散るまでに、王子が人を愛し人に愛されることを学び、「真実の愛」を見つけることができなければ、王子たちにかけられた魔法が解けることはない。王子は己の醜い姿を恥じて城に閉じこもり、絶望と失意のうちに十年の歳月が流れた。
とある街に住む発明家モーリスの娘・ベルは街一番の美貌の持ち主で、読書と空想が大好きな父親思いの娘だった。ベルはそんな自分の夢見がちな性分を風変わりと捉える街の人々に馴染めず、街一番のハンサムで人気者だが乱暴で下品な自惚れ屋である狩人・ガストンの執拗な求婚に辟易していた。
モーリスが発明大会に出かけた日、愛馬フィリップが父を乗せぬまま戻ってきたのを見たベルは父に何かあったに違いないと考え、フィリップと共にモーリスとはぐれた森の奥地の城へとやってくる。モーリスは森で道に迷った上に狼たちに襲われてフィリップとはぐれ、辿り着いた城で一夜の宿を頼んだ。それを見かねた蝋燭のルミエールとティーポットのポット夫人はモーリスをもてなそうとしたのだが、怒った城の主である野獣に不法侵入者として捕らえられ、牢獄に繋がれていたのだった。解放を願うベルは父と引き換えに自分が城に留まることを申し出る。野獣はその条件を受け入れ、反対するモーリスを強制的に魔法の馬車に乗せ街へと追い返してしまった。
こうして城に残ることになった失意のベルを、ポット夫人やルミエール、置き時計のコグスワースなど家財道具に変えられた城の召し使たちは快く受け入れ持てなしてくれた。ベルも次第に気を取り直し城の生活に馴染もうと努力するが、礼儀知らずで我がままな野獣の凶暴な振る舞いに耐えかねて城を飛び出してしまう。そして吹雪の中で野生の狼に襲われるが、すんでの所で駆けつけてきた野獣に救われる。その事件をきっかけにベルは醜く横暴な野獣の心の中に残る優しさに気づき、野獣も彼女の優しさに触れお互いに心を通わせるようになる。日々をともに過ごしていく中で、野獣は徐々に人間らしい心を取り戻してベルに想いを寄せるようになり、ベルもまた、野獣に惹かれていく。
二人だけの舞踏会を開いた日の夜のこと、楽しさの中にも父のことを思い沈んだ表情を隠せないベルのために、野獣は魔法の鏡を与えてモーリスの姿を映し出させる。そこに映し出されたのは、病身のままベルを探し求めて森をさまよった末に行き倒れたモーリスの姿だった。彼は酒場で騒ぐガストンたちに野獣の存在を知らせ助けを求めたものの相手にされず、独りでベルを助けに行ったのである。狼狽するベルの姿を見た野獣は、自分の中のベルへの愛情を自覚しつつ、愛するベルの気持ちを思いやり、ベルに魔法の鏡を与えた上で解放する。自分に対するベルの愛情を確かめられぬまま彼女を手放してしまえば、二度と魔法が解けないことを知りながら。
父を助け街に戻ってきたベルは、ガストンが自分の結婚を承諾させるために「城に野獣がいる」と主張するモーリスを狂人として精神病院に入れようと企んでいることを知り、激しく彼を拒絶。モーリスの言うことが事実であることを証明するために魔法の鏡で野獣の姿を見せ、その姿に怯える街の人々に「見た目こそは恐ろしい野獣だが、優しい心の持ち主」と説得するが、その時のベルの様子から彼女と野獣の関係を察したガストンは、ベルから野獣呼ばわりされて拒絶されたことで嫉妬と怒りに駆られ、野獣が恐ろしい存在であると街の人々に吹聴して扇動し、野獣を殺すために城へ夜襲をかけに向かってしまう。自宅の地下貯蔵庫に幽閉された二人は途方に暮れるが、ベルの鞄にこっそり隠れてやってきたポット婦人の息子・ティーカップのチップの妙案により脱出。野獣に襲撃を知らせるために大急ぎで城へと引き返す。
一方、野獣はベルを失った絶望に塞ぎ込んで自暴自棄に落ち込み、侵入者の報告を受けても何ら手を打とうとしない。主人と城を守るべく、召し使い達はルミエールの一計で本物の家財道具になりすまし、侵入者たちの不意を突いてから一斉に反撃を開始、撃退することに成功した。
騒ぎの中、一人野獣の居場所を突き止めたガストンは、背後から矢を放って奇襲し野獣をバルコニーに追い詰める。それでもなお野獣は力なく倒れたまま動こうとせず、徹底的に痛めつけられてしまう。だがガストンが止めを刺そうとした刹那、駆けつけたベルの叫び声を耳にして生気を取り戻した野獣は反撃を開始する。ついにガストンを追い詰め、怒りと共にバルコニーから落とそうとした野獣だが、命乞いをする彼の姿を見て命を奪うことは思いとどまり、出て行けと言い放つ。だがその温情が仇となり、屋根を伝ってバルコニーに上りベルと念願の再会を果たした直後、背後からわき腹に短剣を突き立てられてしまう。その拍子に二人は共にバランスを崩し、ガストンは谷底へ落下して死亡する。野獣はベルに掴まれかろうじて救われるものの瀕死の重傷を負い、もはや虫の息であった。途切れ途切れに愛と別れの言葉を口にし事切れた野獣の亡骸にすがり、涙をこぼしながらベルが愛を告白した直後、バラの最後の花びらが散っていく。
皆が悲しみにくれる中、突然空から流星が振りそそぎ、野獣の身体が光に包まれたかと思うと、野獣は元の美しい立派な王子に戻って蘇った。彼の眼差しから王子が野獣本人であることを確信したベルは喜びと共に口づけを交わしあう。すると降り注ぐ光と共に厳めしい形に変えられていた城は元の荘厳な姿に、召使い達は元の人間の姿に戻っていく。ベルの愛の告白により、ついに野獣は愛し愛されることを学ぶ試練を乗り越え、自身と城にかけられた呪いから解き放たれたのである。
こうして、人間に戻った王子とベルは結ばれ、本来の美しい姿に戻ったお城で末永く幸せに暮らすのであった。
登場人物[編集]
【ベル】
本作の主人公。容姿も心ばせも美しい娘。読書と空想が大好きで、町の人からは風変わりで謎めいた娘だと思われている。 父モーリスが野獣の城で捕らえられ、父の身代わりとして自分が城で暮らすことを決める。そして短気で我がままで乱暴だが根は優しい野獣と次第に心を通わせ、結ばれる。「ベル」とはフランス語で「美しい」という意味。ディズニープリンセスの一人。
【野獣 / 王子】
村の外れの森に立つ古城の主。人を見かけで判断し、冷たく振舞う傲慢な性格ゆえに、老婆を装って宿を求めた魔女の手で罰として強力な魔法をかけられ、醜い野獣の姿となってしまった。魔女から貰った魔法のバラがすべて散るまでに「真実の愛」を学ばなければ人間の姿に戻ることができない。絶望のうちに日々を送っていたが、ある日偶然捕えたモーリスの身代わりとなったベルと城で過ごすうちに人間らしい感情と優しさを取り戻していき、最後はベルの愛により強力な魔法から解き放たれて元の姿に戻り、ベルと結ばれる。
【ガストン】
本作のディズニー・ヴィランズ(ディズニー作品の悪役キャラクター)。ベルが住む町の英雄。狩りの名人で女性にも人気がある。一見陽気で気さくな性格で見た目もハンサムだが、実際は怪力と銃の腕だけが自慢の自惚れ屋で、本性は野獣そのもの。ベルの美貌に惚れ込んでおり妻にしたいと思っているが、無作法かつ粗野な振る舞いと性格の悪さから当の本人には毛嫌いされている。ベルを我が物にしようと陰謀を巡らし、ベルと懇意にある野獣を殺すべく村人を扇動して野獣の城へ攻め込み、野獣を亡き者にしようとするが反撃に遭い、命乞いの振りをして騙し討ちにした拍子に塔から転落死する。
【ルミエール】
フランス人の城の給仕頭で、城にかけられた魔法で燭台付きの蝋燭の姿になっている。スマートで陽気、ダンスと歌に加えてゲストへのもてなしも得意。 城の中に敷かれた規則を気にしない大らかな性格から几帳面で律儀な性格のコグスワースとは度々ぶつかっているが、なんだかんだで気は合う様子。焦ると蝋燭が溶ける。フェザーダスターの恋人である。家財道具に姿を変えられたことを利用し、本物の家財道具に成りすまして侵入者を撃退することを提案するなど、いざという時には機転も利く。
【コグスワース】
城の執事で、生真面目で口うるさい性格で、城にかけられた魔法で時計の姿になっている。感情に応じて時計の針がくるくると回る。涙もろい一面も持つ。ポット夫人とは夫婦のような仲であり、チップのことも可愛がっている。人間の姿では鬘を着用している。 陽気でノリのよいルミエールとは度々衝突するがそれなりに馬は合うようで、ル・フウに追い詰められたルミエールを救い出す活躍も見せた。
【ポット夫人】
城のメイド頭で、チップの母親。城にかけられた魔法でティーポットの姿になっている。優しく温かい性格で、ベルに母親のように接する。使用人の中では古株で、野獣も頭の上がらない唯一の人物。料理上手である。穏やかで温かく優しいが、城と主人を脅かすものに対しては容赦がなく、熱湯を注いで撃退する過激なところもある。また、時に主人の命令を顧みずに行動することもある。人間の姿はふくよかな体型の白髪の老婆。 作中で最も有名なベルと野獣のダンスシーンで、アカデミー歌曲賞を受賞した主題歌『ビューティー・アンド・ザ・ビースト〜美女と野獣 』の歌い手を務めている。
【チップ】
ポット夫人の息子。城にかけられた魔法でティーカップの姿になっている。ベルを好いておりいつも傍にいたがる。同じ姿の兄弟が何人もいるが、チップは縁が欠けている。人間の姿では6歳ほどの子供で髪は金髪。
【フェザーダスター】
城のメイドで、ルミエールの恋人。城にかけられた魔法で羽根ばたきの姿になっている。人間の姿では黒いメイド服を着たセクシーな女性。
【ワードローブ】
城の着付け係で、元有名なオペラ歌手。城にかけられた魔法で洋服ダンスの姿になっている。元の姿はラストシーンの後姿のみしか出てきていないが、ミュージカル版ではドレスを着たふくよかな女性である。出番も多く
【フットスツール】
大型犬。城にかけられた魔法で足置きの姿になっている。人懐っこい性格。実際は白い犬で、小柄な少年の姿に戻ったチップを背中に乗せていた。
【コートラック】
城の使用人で、バイオリニスト。城にかけられた魔法でコート掛けの姿になっている。緑色のシルクハットをかぶっている。手先が器用で、王子の散髪やバイオリン演奏を担当している。ずぶ濡れになったモーリスに毛布を掛けたり、城に襲撃しに来た町民に連続パンチを繰り出す等、出番が多い。
【シェフ・ブーシュ】
城の料理人。城にかけられた魔法でコンロの姿になっている。ベルが晩餐に来なかった事で愚痴をこぼしていたが、ベルが厨房に訪れたときは張り切って火を起こした。ガストン達が城に襲撃しに来た時は強火にしたコンロの炎で脅かし、彼らを追い返した。
【モーリス】
ベルの年老いた父で、発明家をしている。娘想いの優しい父親でベルからも尊敬されているが、村人にはその活動を理解されず笑い者にされている。森で狼の群れに襲われて道に迷い、辿り着いた野獣の城で暖を求めたが野獣に一蹴され、不法侵入の罪で牢屋に入れられてしまう。その後かけつけたベルが代わりに捕らえられたことで解放され、一方的に城から追い出されてしまう。その後、娘を救うべく一人で城に向かう途中病気で行き倒れになるが、ベルに助けられ一命を取り留める。
【ル・フウ】
ガストンの手下で、背が低く小太りの男。いつもガストンについて回って持て囃しており、ガストンのためなら何でもすると豪語する。歯が欠けており、容姿も悪いが茶目っ気がありどこか憎めない。 襲撃についていくものの、城の召使たちの反撃にあい、ガストンを置いて逃げ出してしまった。
【町娘】 ガストンの取り巻きである3人の女性。全員顔はそっくりだが、それぞれ前髪の形やドレスとリボンの色が異なる。ガストンのことが大好きだが、ガストンはベルに好意を向けているため、ベルの存在を快く思っていない。
【ムッシュー・ダルク】
町の病院の医師で、ガリガリに痩せた老人。怪しげな雰囲気が醸し出している。冷酷な性格。夜中にガストンに呼び出され、酒場でガストンの作戦を聞く。その作戦は「モーリスを精神異常な患者として病院に入院させ、それを取り消す代わりに結婚しろと、ベルを脅す」という内容であった為、快く協力した。ベル達が自宅に戻った後、モーリスを病院に連れて行こうとしたが、失敗に終わった。
挿入歌[編集]
・朝の風景
・ベルのひとりごと
・強いぞ、ガストン
・ガストンの悪だくみ
・ひとりぼっちの晩餐会
・愛の芽生え
・美女と野獣
・夜襲の歌